top of page

老後に意味をつける

 共和党党大会は一部の党議員がトランプ氏の大統領候補決定を拒み、大荒れだった。民主党はヒラリー候補がほぼ確実で、米国史上初の女性大統領誕生も視野に入ってきた。一説に、8年前、オバマの前にヒラリーが大統領の座を占めるはずだったが、新星オバマの勢いに屈したともいう。当時ヒラリーは情熱の全てをかけて選挙戦に挑み、本人も周囲も、初の女性大統領かと熱くなった。だが、こういう時は意外に本命が勝利を逃すものだ。  期待が大きかっただけに、ヒラリーは力尽き、時に引退説もささやかれた。しかし彼女には信念があり、また不死鳥のように再起した。落ち着いた貫禄を示し、女性大統領は当然という雰囲気さえある。世間の下地も出来上がっている。弁護士、ファーストレディー、上院議員、国務長官と経歴一つとっても底力の程が分かる。アメリカ人が女性の中で最も尊敬する人に挙げられることも多い。もし大統領になればその歩んだ道は誰にも到達できなかった高い山を登ってみせたという事になる。現在68歳。彼女が与えるインパクトには絶大なものがある。  影響を与えるのは、遠い所に居る人ばかりではなく、身近に接する人たちの中にもいる。80歳をこえてコーラスに属し、クラシック古典の難曲に取り組む人、78歳になっても引退者社会で住人の身の上相談に親身で付き合う人、ボランティア団体の雑務をまるで仕事のようにコツコツと処理する人。自分にその能力が残っている間は年齢を理由に怠惰になる事を自分に許さず、自分のできることで有益な一社会人であり続ける。こういう人たちこそ、どうすれば老後に意味をつけられるのかを教えてくれる。  健康で長生きはもち論素晴らしい。その上に蓄積した自分の能力を、社会に還元することを実行している人たちを敬愛する。容易なことではない。しかし本人ははっきりと知っている。それが社会の中でどのような役割を果たし、後続の人に希望の光を与えているかを。老後に意味をつけられた時、人は静かな達成感を味わうのではないだろうか。 【萩野千鶴子】

0 views0 comments

Recent Posts

See All

熱海のMOA美術館に感動

この4月、日本を旅行中に東京から新幹線で45分の静岡県熱海で温泉に浸かり、翌日、山の上の美術館で北斎・広重展を開催中と聞き、これはぜひと訪れてこの美術館の素晴らしさに驚き魅せられた。その名はMOA美術館(以下モア)。日本でも欧米でもたくさんの美術館を見たがこれは 所蔵美術品の質と数の文化的高さ、豊かな自然の中に息を飲むパノラマ景観を持つ壮大な立地、個性豊かな美術館の建築設計など卓越した魅力のオンパ

アメリカ人の英国好き

ヘンリー王子とメーガン・マークルさんの結婚式が華やかに執り行われた。米メディアも大々的に報道した。  花嫁がアメリカ人であるということもあってのことだが、それにしてもアメリカ人の英王室に対する関心は異常としか言いようがない。  なぜ、アメリカ人はそんなにイギリス好きなのだろう。なぜ、「クィーンズ・イングリッシュ」に憧れるのだろう。アメリカはすでにイギリス系が多数を占める国家ではない。いわゆるア

野鳥の声に…

目覚める前のおぼろな意識の中で、鳥の鳴き声が聞こえた。聞き覚えがない心地よい響きに、そのまま床の中でしばらく聴き入っていた。そうだ…Audubonの掛け時計を鳴かせよう…  Audubonは、全米オーデュボン協会(1905年設立)のことで、鳥類の保護を主目的とする自然保護団体。ニューヨークに本部がある。今まで野鳥の名前だと思っていたが、画家で鳥類研究家のジョン・ジェームス・オーデュボン(1785

bottom of page