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伝統と最新トレンドを紹介:30回の節目、原点に回帰

「カツヤ」レストラングループの上地勝也社長による200ポンドのマグロの解体の実演

 日本食卸売業「共同貿易」(山本耕生社長)は、業界向けの「日本食とレストランエキスポ」を9月22日、パサデナのコンベンションセンターで開いた。30回の節目を迎えた今年は、第1回の原点に帰った伝統と、最新のトレンドの双方の紹介に努めた。【永田 潤】

包丁の砥ぎ方を指導する「築地・正本」社長の平野操さん(左)。エキスポには第1回から参加し、開催当初を振り返り、その発展ぶりに感嘆していた

 エキスポは1989年にコメ、味噌、しょうゆなどの食材や瀬戸物、厨房機器などの紹介で始まった。健康志向、すしブームの波にも乗って和食が浸透すると、大衆料理から高級料理までの幅広いラインナップを持つまでに発展。日本国外で世界最大規模を誇る同エキスポへの関心は高く、今年は133業者、参加者2667人を集め盛況を極めた。  日本食のトレンド紹介に力を注ぐ同社だが、エキスポ実行委員長を務めた同社の阿部真臣・仕入部・アシスタント副社長によると、30回の節目にイベントを始めた原点に回帰し「古き伝統を継承しながら、新たな風を吹き込もう」と再定義したという。温故知新の意味を込めた同社の造語「新風故源(しんぷうこげん)」を旗印に「本物を届ける場所」と位置づけ臨んだ。  同社は和食の啓蒙に力を入れており、イベントでは専門家を招いた各種セミナー「和牛のおいしい調理法」「200ポンドのマグロの解体の実演」「地酒のペアリング―宮崎牛と本マグロ」「包丁の砥ぎ方」を開いた。

長い行列ができた宮崎牛の試食

 宮崎牛を紹介した畜産加工・販売・飲食など多角経営する「ミヤチク」(本社宮崎・都城)の社長、有馬慎吾さんによると、宮崎牛の日本国内での認知度は、松坂牛や神戸牛、米沢牛に次ぐというが、内閣総理大臣賞(5年ごとの品評会)を昨年までの3回連続受賞しており「味は世界一」と胸を張る。宮崎牛の輸出は90年の米国を皮切りに香港、マカオ、シンガポール、タイ、台湾、カナダ、フィリピンの8カ国に上り、対米は最大といい「年間110トンで輸出全体の4割を占め、大切なお得意さん」。この日は多くのレストラン関係者の商魂を目の当たりにし「世界遺産入りした日本食ブームを感じた。このチャンスを生かして宮崎牛を売り込みたい」と、刺激を受けた様子で話した。料理の仕方は、ステーキ、たたき、カルパッチョ、すしなどを挙げ「いろいろある。地酒、焼酎、ワイン、スパークリング、ビールにも合う」と強調。「輸出量は年に150%伸びているとし「年々高まっている需要に応えたい」と、意欲を示した。  ウィティアの目抜き通りにすし店「だから」を構えるジェイソン・エノモトさん、関さおりさん夫妻は、宮崎牛を試食し納得の表情を浮べ、最高級の「A5」を注文した。「宮崎牛は、結構売れる」という板前のジェイソンンさんの調理法は3種類。「炙ってほんの少し塩と刻みわさび」「大根おろし」「ガーリックチップ」を客の好みに合わせて出す。さおりさんは、取り揃える地酒について「にごりと樽がよく出て、一番の人気(ブランド)は『菊水(新潟)』」と説明。この日は、共同貿易がトレンドとして紹介した、みぞれ酒とぬる燗に興味を示したが「やっぱり、うちのお客さんはホットかコールドのどちらか」といい、ぬる燗を今後、店で出すかの問いには「お客さん次第。(メニューにはまだない)焼酎も同じ」と答えた。店は、バーを含め全36席を常連客が埋め繁盛し「開店して5年で、地元で愛されビジネスは伸びている」と述べた。

5種類のエールを紹介し試飲を勧める「黄桜」の髙橋さん

 創業93年の老舗酒造メーカー「黄桜」(本社京都)は清酒のイメージが強いが、23年前からビール製造を始めており、共同貿易と取り引きして3年が経つ。同社営業統括部の髙橋華奈子さんは、米市場での営業戦略について「インポーターとコラボレートして、25種類のプライベートブランドを開発し売り出している」と説明。クラフトビールは「京都伏見の酒蔵が、日本の食文化、日本独特の四季を意識して自信を持って作った」。モルトとホップ、水を基本原料に、和のテイストを前面に押し出し自社開発した5種類のエール「ホワイト柚子」「黒豆」「蔵の香り」(日本酒の酵母を利用)「山田錦」(酒米を使用)、そして米国限定の「抹茶」を販売する。試飲では、やはり売れ筋のホワイト柚子が好評を得、「シロップを使用せず、柚子の果汁と柚子チップを加えて作った天然原料を強調した。飲みやすく、柚子独特の苦みを表現しているのが分かってもらえたと思う」と喜んだ。エキスポについては「共同貿易や他の業者が、日本食の啓蒙をしているので、参加者の関心が高く、和食が根付いていることを肌で感じた」と感想を語った。 山本共同貿易社長 「日本食は『世界の食』になる」  「日本食は、『世界の食」になる。『おいしい』『健康にいい』『見て美しい』の三拍子揃っている料理は、世界になかなかない」と力説する山本社長。フレンチやイタリアン、メディタレニアンなどのレストランでは、日本食のすしや刺身(カルパッチョ)がメニューに入っている」と指摘し「境なく、アメリカ人の食文化のメインストリームに入りつつある」と力を込める。  ラーメン、焼き鳥、回転すしなど大衆料理と、「おまかせ」メニューが人気を呼ぶすし、割烹の高級料理の流れを「二極化」と捉え、今後もこの傾向に対応する構えを示す。  大衆化について「日本食の裾野をいっそう広げ、日常化につながっている。将来、アメリカ人のダイニングスタイルに入る一つの道筋をつけている」と歓迎。大衆店、高級店とも日本で成功した専門店が進出することで「業界全体のレベルを押し上げておいしくなっている。それが消費者の満足度を上げ、日本食はさらに発展している」と評価。  発信するトレンドは「日本食の流れは業界がお客さんとともに作るもの。その流れを見極めながら、次の新しいトレンドをこれからも作って行きたい」と意欲を示した。  イベントを振り返り「お客さんの熱気をじかに感じた。どのブースもお客さんとメーカーの商談が盛んで非常に良かった」と喜んだ。顧客を満足させる食材やひと味違った調味料、味のいい地酒、厨房機器、すぐに役立つレシピを提供したといい「今日来たお客さんが、そういう何かを発見して、明日の日本食の鍵となるようなものを見つけてもらったとすれば本望」

ブースを回り、業者を激励する(左から)共同貿易の大畑正敏副社長、山本社長、NY共同貿易の釣島健太郎副社長


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