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食のしあわせ

 お盆カーニバルが終わって、二世週祭とLA七夕祭りが続く。暦の上では、もうすぐ立秋。1年の半分以上が過ぎて、季節も移り替わる。  暑さが過ぎると食欲が出るという人も多い。食欲といえば、学校給食も。日本に行ったことがあって、学校給食を食べたことのあるアメリカ人は感嘆の言葉を発する。栄養バランスがよく、おいしい! と。その給食費を払わない、払えない家庭が45%もいるという。  1980年の頃、自分が中流と考える人が90%という記事に、向田邦子さんが「毎日1回、同じものを食べて大きくなれば…そう考えるようになって無理はない」と。「戦前の小学校のお昼というのは、貧富などを考えないわけにはいかない時間だった」と「お弁当」と題した随筆に書いている。  「ララ物資」という言葉を知らない世代が多くなっていると思うが、戦後の困窮する日本にアメリカから贈られた援助物資のことだ。当時アメリカに住む日本人、日系人も物資調達から日本への輸送に奔走した話は渡米してから聞いた。そのララ物資が戦後の学校給食再開のルーツだという。学校給食が全国に普及して、小学校のお昼から貧困が消え、中流化していった。  それが今は、子供の6人に1人が「相対的貧困」とされる水準の生活をしているという。給食のない夏休みに体重が減る子供がいるとも。日本の将来に関わる、何とも心が痛む話だ。  周りを見回すと、子供だけのことではない。ここで、高齢者に食事を提供するプログラムのボランティアをしているが、一人暮らしをしている高齢者にランチを届けている。その一食が彼らの生活を支えている場合があることを聞かされると、重要な役割を担っていると思わされる。彼らは、貧困ということではない。中にはいるかも知れないが、高齢に伴う心身の機能低下から食事の仕度ができない、食べ物の認識度や咀嚼低下などが起こってくる。  お祭りで出店の食べ物をあれこれ楽しんだり、どこそこの何がおいしいと言えていることを感謝し、かみしめたい。食は生きる基本であり、楽しみでもある。生き甲斐ともなる食、祭りとともに楽しもう!【大石克子】

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