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顧みれば、日本

 あと数日で新しい年になる! 毎年、何をしているんだろうと思う年末。出会いと別れ、新発見と忘却、喜びと不快なことはある。自分のことでなくても、理不尽なことや不条理は気持ちに引っかかって残る。  それでも、日々の営みをこなし、求められることを滞らせずに終えられることは、ありがたいことと思う。春に日本で会った友人が夏に脳梗塞に罹った。まだリハビリの毎日と聞いて、無常を思う。  今年の火災は多いというか、大きかったと思う。例年の山火事より、人家の被害が甚大だった。ツナキャニオンで発生した火事の跡地で、知人のアメリカ人アーティストグループが、日本に伝わる金継ぎの手法をアートに用いた。「金継ぎ」は茶器や壺などが壊れた時の修復に金を継ぎ目に使う。焼け跡は山一帯なのだが、その一部の焼け残った木々の幹や枝、切り株に金を流し込んで、修復への願いを金継ぎに込めたアートを紹介した。さりげなく金継ぎの説明があって、鑑賞したアメリカ人は「KINTSUGI」を知ることになった。日本人でも分からない日本の文化は、こうして日本を離れたところで伝えられていくのだろうかとさえ思えてくる。そして、拾い上げて活用しようとする彼らの日本文化に対する興味と関心の高さに敬服した。  ところで、リトルエチオピアにあるナーシングホームを何年も訪問しているのに、近くのコーヒーショップなど寄ったことがなかった。人を連れて行ったときに、寄ったコーヒーショップのオーナーが日本人だった。メニューに抹茶や抹茶を使ったケーキがあった。日本人が行かないような場所で、コーヒー、紅茶だけでなく、点てた抹茶を出そうという心意気に打たれた。お茶を知らない人が試して、関心を示す。そしてまた人に広める、小さい活動ながら日本が広がる思いがした。  小東京交番には、日本語を学んでいる学生ボランティアがたくさん来た。日本語がこんなに学ばれている、と知らされた。彼らが使用しているテキストに出てくる作家や哲学者を、日本の学生が知らないということがあっておかしかった。  いろいろに日本のいいものが広められていくことはうれしい。【大石克子】

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