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清水の舞台から…

 知人の娘さんが日本からアメリカの高校に編入してきて3カ月が経った。彼女はアメリカ生まれで、7歳までサンフランシスコ近郊で過ごした。その後、三世の父親とともに東京に移住し、この春、10年ぶりに帰米した日系四世だ。  子供の頃、脳細胞に入り込んだ英語の聴力や発音力はそのまま残っている。父親とは英語で話していたし、英語教育を重視する高校で英語をみっちり勉強してきた。  編入直後から英語の論文試験では高得点をとっているし、友達の勧めで出たスピーチコンテストではネイティブの高校生と比べ、遜色ないくらいの表現力を発揮した。専門家いうところの「Proficient bilingual」、あるいはそれに近いように思う。  「ネイティブのように英語が話せて、読めて、書けるように絶対なりたい。そのためにはどうしてもアメリカに戻りたいんです。日本の高校を卒業してからか、大学を出てからか、できるだけ早くか」  昨年秋、1週間ほど遊びに来ていたときは、帰米のタイミングで悩んでいた。その後、なぜ、今、高校編入を決めたのか。  「ある人に『清水の舞台から飛び降りろ』と言われたとき決めました」と明かした。  「清水の舞台…」。〈思い切った決断〉を意味する常套句だ。  清水寺の舞台は地上約12メートル。4階建てのビルに相当する。  境内の事故を町奉行に報告するために記録されていた「清水寺成就日記」には、江戸時代、ここから234人が飛び降り、死んだのは34人とある。生存率は約85%。  飛び降りた動機は、「病気の治癒のため」「母の眼病を治すため」などなど。自殺願望ではなく、「観音様に命を預けて飛び降りれば、命は助かり、願いも叶うという民間信仰」(清水寺学芸員の坂井輝久氏)だった。(日経新聞13年11月24日付)  さて、清水の舞台から飛び降りた帰米四世のお嬢さん。命は助かったが、新生活に馴染むのに毎日、悪戦苦闘している。  果たして願いは叶うのか。頑張り屋さんらしいからきっと叶うに違いない。【高濱 賛】

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