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沖縄からの手紙

 沖縄から一通の手紙が届いた。  「…今年は異常気象で南国沖縄でもみぞれの降る何十年ぶりの寒さでしたが、スナップ写真を頂き一瞬のうちに春の暖かさに包まれ幸せ一杯になりました」と達筆で記してある。沖縄を紹介する美しい本も2冊同封されていた。  妹夫婦の誘いで実現した昨年末2泊3日の沖縄旅行は、那覇空港の滑走路一時閉鎖で飛行機が一旦宮古島に着陸するというハプニングで始まった。到着が遅くなったのでその日はホテルへ直行。翌日は、ホテルを拠点に近場を回ろうという妹の提案で、「琉球王国のグスクおよび関連遺産群」として世界遺産に登録されている遺跡の一つ、中城(なかぐすく)城跡を訪れたのだった  14~15世紀琉球王国時代の城跡は、東に太平洋、西に東シナ海を望む小高い丘の上にあった。平日のためか人影は少なく、強い風の中に石積みの高い城壁がいくつも続き、往時の様子を想像させる手がかりとなっていた。  そこで出会った地元沖縄の女性が、冒頭の便りの主だ。  「どちらから?」との質問に夫がシアトルからと答えると、「私、シアトルに行って来たばかりなのですよ」と驚く。そうなるとたちまち話が弾み、「よくぞはるばるここに来て下さった。観光地化した首里城と違う素晴らしさがあります」「この城跡に祈祷所跡がいくつもあるのは、多くのことが祈祷師により決められていたからです」など、地元の人ならではのことを教わった。その時一緒に撮った写真を、年明けてシアトルから送ったのだった。  その人、外間(ほかま)邦子さんが「対馬丸記念館」理事を務めると聞いて同館ウエブサイトに入った私は、疎開学童ら1484名の犠牲者の出た「対馬丸」撃沈事件について初めて詳しく知った。1944年8月、疎開のために沖縄から九州へ向かう人々を乗せた対馬丸は、航行中に魚雷を受けて沈没した。ようやく助かった子供たちの証言集は、戦争の引き起こした悲惨さを如実に訴えていた。  「エメラルドグリーンとコバルトブルーの海の色を満喫して来ました。2冊の本で、沖縄の海を紹介させていただきます…」と外間さんの便りは続く。  ぜひもう一度沖縄を訪れてみたいと思う。【楠瀬明子】

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