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沈黙は美徳じゃない!

 「ねぇ、上司からパワハラメールが来たんだけどどうしよう。彼の意見に反対したら昇進させないって脅された。おとなしく従った方が身のためかな」「今の老人ホームにいられなくなったら困るから、いろいろ言いたいことがあってもおとなしくしているの。私のコメントは書いてもいいけど匿名にしておいてね」  日系人、日本人問わず、私の身の周りで普通に交わされる会話だ。どうして私たちは他人の目を気にしてビクビクしながら我慢して暮らさないといけないのか。  日本には昔から「沈黙は美徳なり」「出る杭は打たれる」「見てみぬふりをする」「事なかれ主義」「村八分」などということわざや慣用句があり、私たちの社会生活に今でもかなり深く根付いている。農耕民族の日本人は、広大な田んぼで米を栽培するのに自分の家族だけでの力では足りず、隣近所や親せきなどコミュニティーの多くの人たちに助けてもらう必要があった。だから波風を立てぬように穏便に過ごし「和」を重んじ、暮らしを守ってきた歴史がある。  良くも悪くも、私たちは今でもこの風習を引きずっている。しかし、こういった日本社会独特の閉鎖的な空気は、何か問題が発生し、解決したり改善していこうとするとき、あまりにもマイナス的な要素になる。  ロサンゼルス日系社会の高齢者たちを長く支えてきた敬老ホーム4施設の売却先が正式に決まり、州司法当局からの承認が下りた。しかし、これからも元々の組織「敬老シニアヘルスケア」は非営利団体として引き続き経営を続け、4施設と関わる。米の営利会社への売却で不安が広がる中、いま最も問題視されていることは、今まで敬老側は今回の売却の件についてオープンにコミュニティーに説明をしてこなかったことだ。長年にわたり日米からの多額の寄付やボランティアなど、まさにコミュニティーによって支えられてきた敬老はその責任を果たす必要があり、それが今求められている。これは「モラル」に関わる問題ではないか。  たとえ売却が決まったとしても、これからの運営に向けて私たちの声を届けることは可能だ。沈黙は美徳ではない。今こそ1人1人がきちんと声をあげて日系社会を開かれたものにしていく時ではないか。【中西奈緒】

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