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戦後70年の首相談話に思う

 第二次大戦後70周年の首相談話は、世界の注目を集めた。安倍晋三氏が再び首相に返り咲き、国の防衛に重きをおいた言動は日本が右傾化し、中国・韓国との摩擦を拡大しアジア地域に緊張を高めるのではないかと懸念されたからである。  談話は、戦争を歴史的に振り返り、日本が国際秩序への挑戦者(侵略)となったこと。多くの人々に苦しみと犠牲を強い、深く名誉と尊厳を傷つけられた女性たちもいたことを述べ、戦後日本は戦争を繰り返さず、国際紛争を解決する手段としての武力放棄を誓った。また、先の大戦における行いに、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明してきた歴代内閣の立場は、今後も揺るぎないと断言した。  戦争はすべての人が否定する。しかし戦争を嫌い、核のない世界を願うだけでは平和は実現しない。争いはなぜ起こりどうして戦争になるのかを考え、その原因をどのように回避できるかを考えねばならない。憲法前文には「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とある。しかし各国政府は自国の国益のために働いており、他国に対し公正と信義を尽くすものでない。自衛のための最小限の軍備、経済的な繁栄と健康で住みやす住環境の確保、国内の治安維持、これに技術水準や文化水準が加わって、日本は良い国だな、あの国と仲良くすれば共に繁栄し共存できるだろう、あの文化に興味があり学んでみたい、あの国に住んでみたい、という親和力が加わって平和が保たれ繁栄を続けられる。  不可侵条約を破り8月9日に宣戦布告・侵攻したソ連軍。情報や自衛手段もなく置き去られた満州の居留民。備えの薄い北方領土でソ連軍の一斉侵攻を受けた人々。領土を拡張したいソ連が停戦をしたのは降伏を超えて9月6日だった。全国の空襲、原爆投下、玉砕の島々、巻き込まれた住民たち。戦後70周年という節目の年に、今まで語られなかった事実が次々に報道されている。われわれは平和を保つためにもそれらに向き合って学び、どうすれば平和を保てるかを考えねばならない。それが生き残ったわれわれの責務であろう。 【若尾龍彦】

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