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憲法改正論議

 5月3日は憲法記念日、1947年5月3日に施行されて71年になる。憲法が改正されずに続いているのは日本の71年が最長である。何度も改憲が議論され、国民の合意が得られず71年が過ぎた。太平洋戦争が残した傷跡が深く、それだけ国民に平和への希望が根強く、9条保持へのこだわりが強かったのだろう。  そもそも法は、単独では生きてゆけない人間が、社会を作って生きてゆくために必要なルールを成文化したものである。時代と共に社会が変化すればルールも変わり法も変わらざるを得ない。日本では改憲は9条を変えるか変えないかに議論が集中した結果、71年も過ぎたのである。他の条項も改憲の対象として議論すべきであったが、9条、すなわち不戦・武力不保持の条項が平和希求の国民の願いと共に重かったのだと思う。  改憲の論拠に「GHQに押し付けられた憲法だから」が強い。連合軍総司令官マッカーサー元帥は、日本本土への米軍進駐の実態から、占領政策には天皇の存在が不可欠との思いを強くした。当初の連合国(極東諮問委員会)の意見では、天皇の戦争責任論が強かった。これを回避するには、日本は再び軍国主義国家にはならないとの説得が必要である。そのためには国の指針たる新憲法の制定が必要だと考えるに至る。  ここに交戦権・武力不保持の条項を盛り込めば天皇制保持を説得できると考えたに違いない。日本が独立を果たせば、いずれ改憲は行うとの読みがあったと思われる。  GHQ憲法草案スタッフの幾人かに後年インタビューすると、「えっ、今でもあの憲法を変えずにいるの?」と驚かれたという。現に朝鮮戦争勃発後は、米国は何度も日本に再軍備を迫った。しかし、時の政府はこの平和憲法を盾に再軍備を断っている。  政府の責任は、いかに国民の安寧と繁栄を保つかにある。そのために軍備を持つ方が良いのか悪いのか、どのように平和を保つように外交を展開するのか、多角的に知恵を絞らねばならない。同時にそれを国民に知らしめ、考えて賛同してもらわねばならない。改憲論議が本当に日本の将来に資する方向に向かうことを心から願う。【若尾龍彦】

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