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寝たきり高齢者の介護:講師の三島さん「持ち上げない、力を使わない」実践セミナー

参加者の質問を聴く三島さん


日系パイオニアセンターではこのほど、在宅介護エージェンシー「PACE CARE」主催による日本語使用の「寝たきり高齢者の介護の仕方 実践セミナー」を開催した。前・後2回にわたるこの無料講座では、看護師で老年看護学専任教員の三島八重子さんが講師を務めた。講義の後半であるこの日は前回の約半数、15人前後の受講者が熱心に耳を傾けた。【麻生美重、写真も】 三島さんの講義は「ボディーメカニクス」という理論を用いて進められる。骨格、筋肉、内蔵などを中心とした身体の動きのメカニズムを活用するこの技術は、「被介護者に出来るだけ近づく」「身体をねじらない」など、七つの原則に分けられる。 ベッドに見立てたテーブルから被介護者を移動させる動きの実演では、重心を低くし、姿勢を安定させるなどのポイントが示された。受講者はすかさずスマートフォンをかざして写真を撮り、メモに記すなどした。 次に、同社所属ケア・マネジャーの定本明子さんが高齢者役で車椅子に座ると、段差のある場所での動き方が解説された。車椅子を押す介護者が、自身の体重やテコの原理を使い、自分にかかる重さを軽減するテクニックや、坂道を移動するときの介護者の立ち位置や姿勢などが三島さんの分かりやすい動作で実演される。「車椅子のアームやレッグホルダーは簡単に取り外しが可能。必要ないとき、動きの妨げになるときは取るように」。このことを初めて知った参加者からは驚きの声が上がった。

重心を下げて片方の足を被介護者の両脚の間に入れ、体を近づける(右) 協力を得て一緒に立つ(左)


ポータブルトイレの寝室への設置も推奨された。洗面所まで歩く煩わしさや、手助けしてくれる人への遠慮から、多くのお年寄りが水分摂取を控える傾向にあるという。ポータブルトイレを清潔に保つコツについては、参加者からの意見も飛び出し、それぞれの体験談も語られた。 介護に役立つグッズとして、平行移動させるのに便利なスライディングボードや、一枚あると介護が楽になるというスライディングシートが紹介された。スライディングボードは一見ホームセンターで手に入る板のようだが、たいへん滑りやすく工夫されているとのこと。 このセミナーでは、「持ち上げない・力を使わない介護」というポリシーの下、介護者と被介護者の自然な動作を使うことが繰り返し説かれていた。普段、人はどんな動作をするのか、どのような動きが自然なのか、示されなければ意外と気づくのは難しい。また、こういった介護を成功させるためには、被介護者の力を借りる、そして「ありがとうと声かけをすることが大切」と三島さんは語る。 オレンジ郡から参加した介護士の鈴木順子さんは、「日本的なきめ細かいセミナーだった。とても実践的だったので参加して良かった」と述べた。同じくオレンジ郡から参加の池原まりこさんは、「近い将来、日本にいる親の介護をすることになったときに役立つかもしれない」との思いで参加した。 セミナーを企画した定本さんによると、参加者の反応は好評で、オレンジ郡での開催を希望する声もあったという。これからも年に2回、介護セミナーを続けていく予定だ。 「介護の大変さをあらためて感じるとともに、介護とは『優しい心、思いやり』があってできることだと再認識した。セミナーを通じて、素晴らしい介護士を増やしていきたい」と、これからの抱負を述べた。 問い合わせはPACE CAREの定本さん、電話213・725・2273 またはメール― akiko@trypacecare.com まで。

日本的なきめ細かい介護を紹介する講師の三島さん(左)


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