top of page

タダの親切

 見ず知らずの人の食事代を払ってあげたり、駐車料のコインを追加してあげたりする親切運動があるらしい。  若いのに「クォーター下さい」と言う人に時々出会うが、私はあげない。心の中で(シニアでも働いてンねンで!)とつぶやいてしまう。  逆に、自分ならどんな親切をして貰ったらうれしいだろうかと考えた。  日系マーケットで重たいもの、例えば15ポンドのお米、1ガロンのドリンキングウォーターなど、レジのひとがキャーリーバッグに入れるのを手伝ってくれると、とても助かるのだけれど…。プラスチックバッグ禁止になって、レジ係はレジを打つだけになったのだから、もう少し機転がきいてもよさそうなもの。こんな時ちょこっと手助けしてくれるのは、たいてい女の子が多い。レディーファーストの国アメリカはどこへいったのか。  朝のあいさつは、してもされても気持ちのいいものだ。熟年のミセスは無言で笑いかけてくれる。このお兄さんは無視だろうと、そのまま通り過ぎようとすると、意外に声を掛けてくれ、あわてて後ろ姿に「モーニン!」と返したりすることになるが、そんな時はニヤッと笑みがこみあげてくる。それほど、この声掛けは人の心を幸せにする威力がある。  通勤時に同じ顔に出会うと、2度目、3度目にはあいさつしようかな、と思っているうちに4度目、5度目になり、いまさらあいさつしても変? などとお互い意識しながらも、そのままになってしまうこともよくある。  朝のバス停で出会うチャイニーズの女性がいた。ある日、私の綿のブラウスを見るなり、「あっ、それ、私が作った」と言う。若かりし頃に買った、名の知れた日本のメーカーのものである。切り替えが斬新なデザインだったから、彼女もそんなにハッキリと覚えてたのだろうが、こちらはびっくり。  彼女は若い時に縫製工場でミシンを踏んでいたのだそうだ。米国にまでメイドイン・チャイナが浸透する何十年も前から、日本のアパレルは中国の縫製に頼っていたことを知らされた。  朝のあいさつは、こんな出合いにつながることもある。【中島千絵】

1 view0 comments

Recent Posts

See All

熱海のMOA美術館に感動

この4月、日本を旅行中に東京から新幹線で45分の静岡県熱海で温泉に浸かり、翌日、山の上の美術館で北斎・広重展を開催中と聞き、これはぜひと訪れてこの美術館の素晴らしさに驚き魅せられた。その名はMOA美術館(以下モア)。日本でも欧米でもたくさんの美術館を見たがこれは 所蔵美術品の質と数の文化的高さ、豊かな自然の中に息を飲むパノラマ景観を持つ壮大な立地、個性豊かな美術館の建築設計など卓越した魅力のオンパ

アメリカ人の英国好き

ヘンリー王子とメーガン・マークルさんの結婚式が華やかに執り行われた。米メディアも大々的に報道した。  花嫁がアメリカ人であるということもあってのことだが、それにしてもアメリカ人の英王室に対する関心は異常としか言いようがない。  なぜ、アメリカ人はそんなにイギリス好きなのだろう。なぜ、「クィーンズ・イングリッシュ」に憧れるのだろう。アメリカはすでにイギリス系が多数を占める国家ではない。いわゆるア

野鳥の声に…

目覚める前のおぼろな意識の中で、鳥の鳴き声が聞こえた。聞き覚えがない心地よい響きに、そのまま床の中でしばらく聴き入っていた。そうだ…Audubonの掛け時計を鳴かせよう…  Audubonは、全米オーデュボン協会(1905年設立)のことで、鳥類の保護を主目的とする自然保護団体。ニューヨークに本部がある。今まで野鳥の名前だと思っていたが、画家で鳥類研究家のジョン・ジェームス・オーデュボン(1785

bottom of page