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アメリカの未来

 ここ1年余り、久しぶりに友達に会うたびに、よくも悪くも最初の話題は「トランプ」だ。誰もが皮肉っぽい笑みを浮かべて呆れたように首を振る。  メキシコ人へのトランプの極端な偏見差別発言に対して怒りと失望を感じる。女性や他のマイノリティーに対しても彼から思いやりも感じられない。イスラム教徒の人たちの扱いは、まさに戦時中に起きた日系人強制収容と同じイデオロギーを示唆し、恐怖さえ感じる。彼を含めアメリカ人のメンタリティーが実は未だ変わらず、過去のあやまちから何も学んでいないことに悲しくなる。  大統領候補になる人物ほど人格者であるべきで、自分の発言が一般庶民の日常生活にも影響を及ぼす、という配慮を自覚してほしい。さらに失望するのは、これまでトランプの滅茶苦茶で無責任な発言に対して、糾弾する声、人物がもっと強く、多く現れてもいいのに、それほどでもないことだ。「大した問題ではない」とまかり通ってしまっている風潮を危惧する。そして何よりもトランプの支持者が未だ多数存在し続けている事実は理解に苦しみ不安だ。最近の世論調査もヒラリーとは僅差である。  ビジネスマンとして成功した彼の方が経済的に好転すると信じ込むのは、アメリカ拝金主義の落とし穴だ。  雇用低迷は不法入国者が要因、という見解に関してだが、文化や習慣のアジャストに時間もかかり、英語が話せない外国人たちがアメリカに来てすぐに、アメリカ人から仕事を奪っているとは思えない。同じ雇用マーケットで競争しているとは考えにくい。電子化などITの発達、工場のオートメーション化、賃金の安い国外に雇用流出…等、時代の動向に自治体や企業が対応し切れてないのが要因では…?  多くの移民たちは、より良い生活を求めて真面目に一生懸命働き、アメリカ経済に大いに貢献している。例えば農作物の値段が安いのも彼らのおかげだ。また不法入国者たちによる凶悪犯罪が多いと実証する統計はまだ見た事が無い。  11月8日の大統領選挙まで、あと2カ月ほど。アメリカの未来が掛かっている。別れ際の友達の顔は笑みもなく真剣そのものだった。 【長土居政史】

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