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もうひとつのパラリンピック

 「世界は確かに苦難に満ち溢れているかも知れない。しかしそれを乗り越えている多くの人がいることも事実なのだ」。視覚と聴覚の重複障害者で生涯を障害者福祉に尽力したヘレン・ケラーはこの言葉を残した。  マリオに扮した安倍首相が登場し、4年後の東京五輪に向けた演出で幕を閉じたリオ五輪の熱気冷めやらぬ7日、パラリンピック・リオデジャネイロ大会が開幕した。  「パラリンピック」は、下半身まひを意味する英語「パラプレジア」と「オリンピック」が組み合わさった造語で、「パラリンピック」の「パラ」には平行を意味する「パラレル」という意味もあることから「もうひとつのオリンピック」としても認識されている。  そんなパラリンピック出場選手の活躍を「Made in Japan」の技術が陰で支えているという。車いすテニスや陸上競技など、パラリンピックでは選手が車椅子や義足を使って競技する種目がある。選手の勝敗を大きく左右するこうした運動機具の製造技術に日本企業が関わっているというのだ。  男子100メートルの佐藤圭太選手の義足を開発したのは、元五輪陸上選手の為末大氏や義足研究者らが立ち上げたベンチャー企業「サイボーグ」だ。義足のアスリートが健常者のアスリートチャンピオンより速く走ることを夢に、4年後の東京パラリンピックでも採用を目指す。  車いすマラソンの土田和歌子選手が使用した車いすはホンダ系自動車部品メーカー「八千代工業」、車いすテニスの国枝慎吾選手はオーエックスエンジニアリングの車いすを使用。細部まで優れた技術力が選手たちを支えた。  ヘレン・ケラーの言葉にある「困難を乗り越えた人」にはいつだって支えてくれる人がいることもまた事実。ヘレン・ケラー自身、サリバン先生と出会えたからこそ指文字を習得し、話すことも出来るようになった。パラリンピックと平行して選手を陰で支える「Made in Japan」の技術、選手の夢をサポートする技術者たちの活躍は「もうひとつのパラリンピック」ともいえるだろう。選手と彼らを陰で支えた技術者たちの貢献をたたえたい。【吉田純子】

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