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「謝罪」のことば

 戦後70年の節目とあって、テレビや新聞では特集が組まれ、知らなかった事、明らかになった事実など、連日のように学習させられた。終戦時にはかろうじて生まれていたが、戦争は知らないに等しい。今や戦後生まれの世代が人口の8割を超えるという。  事前には随分取りざたされた戦後70年首相談話。おわびの表明は見送ると言ってた安倍さんだが、閣議決定となれば、その個人的見解がどうなるのかと気になっていた。  首相の一語一語、言葉を区切り、明瞭に語る文言は分かりやすく心に響いた。若い世代にも理解しやすく配慮されていると感じた。  「わが国は先の大戦における行いについて、繰り返し、痛切な反省と心からのおわびの気持ちを表明してきた」と戦後50年の村山談話、60年の小泉談話を挙げ「こうした歴代内閣の立場は今後も揺るぎない」とその継承を明言。過去の首相談話に言及する形で、間接的に謝罪の意思を示したのだ。上手に言い表したなーと思わず感心した。と同時に冒頭では村山、小泉談話にはなかった西洋諸国の植民地支配の歴史に遡って言及したことからも、安倍さんの胸のうちが分かるような気がする。  謝罪の文言が入っていたという意見もあれば、村山さんなどは、「首相自身の言葉がない」と言ったそうだが、村山さんは現在90歳(小泉さんは73歳)で少なくとも先の大戦を知っている世代だが、安倍さんは60歳。終戦の年には生まれてもいなかったのである。継承という形でしか、おわびの言葉が言えるはずもない、と私は思う。「あの戦争に何ら関わりのない子や孫の世代に謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」それでもなお「世代を超えて、過去の歴史には真正面から向き合わなければならない」これが、安倍さんの心情であろう。  戦後70年、反省とともに賠償、ODAや国際貢献などおわびの気持ちは態度で示して来た日本国。十分償っていると思う。もうこれ以上の謝罪のことばはいらないと私は思う。それよりも未来に目を向ける事が大事ではないだろうか。日本も近隣国も。  いろいろありましたが、もう「恩讐の彼方へ」としませんか。【中島千絵】

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