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カメ理論

 「鶴は千年、亀は万年」という言葉がある。亀は古くから長寿のシンボルとされ、古くは中国・漢代の百科全書にも書かれているそうだ。実際に亀は見た目には動きが鈍く、体を動かさず長寿を保つように見える。人間も下手に運動をして身体を鍛えるより、亀のように極力動かないほうが長生きするのだという考え方があり、これを亀理論というそうだ。  亀理論の根拠の一つは、心拍数と寿命の関係で、一般に哺乳類はどの動物もその種類に関係なく、一生の心拍総数は決まっており、「15億回」とか「22億回」など諸説はあるものの、あらかじめ決められていて、運動ばかりすれば、心拍数が上がるので一生分の心拍数を早く消耗してしまい、長生きしないとされる。  しかし、この亀理論はどう考えても怪しい感じがする。無精者が運動不足の言い訳に都合よく作った理論にすぎないのではないだろうか。確かに亀は、野生動物としては比較的長命で、種類によっては100年以上も生き続けることもあるそうだが、一般的にはせいぜい30~50年の寿命であり、とても万年というわけではないようだ。  プロ野球の名捕手として活躍し、諸球団の監督も務めた野村克也氏は引退後、亀理論実践者として知られているが、彼は現役時代には散々体を酷使し、現役引退後も過激な運動はしないまでも、講演活動その他で動き回っており、とても亀状態とはいいがたいはずだ。野村さんの亀理論は彼一流のボヤキとかジョークに類するものと理解すべきだろう。  人間は誰でも適度に体を動かすことは健康と長寿にとって必要なことではないだろうか。心拍数に関しても早歩きのような適度の運動を毎日した方が、脈拍数が減るといわれる。むしろ、喫煙、肥満、高血圧などの生活習慣病のほうが心拍数が早くなるので、まず生活習慣病に気をつけるべきだ。  また、仮に一生の心拍総数が同じであるという説が正しかったとしても私は、普段からじっと動かず心拍数を上げない生活よりも、心ときめき、胸がドキドキするような毎日を送ることが出来るのなら、多少寿命を犠牲にしても良いと思っている。【河合将介】

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