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羅府ストーリーは突然に

 久々に日本の桜をゆっくり楽しもうかとのん気に考えていた。そうしたら、突然東京のど真ん中で働くことになって、日々あくせくしている。  満員の地下鉄に乗るとか、高層ビルの合間をサラリーマンとともに早歩きするとか、今までの人生で全く縁のなかった世界だ。ドラマや映画の中であたふたしている滑稽な人間を、遠く離れたところから眺めているようでもある。  このドタバタ劇は突然、嵐のようにやってきた。履歴書を送って面接を受けたら、その日のうちに内定をもらう。その後わずか2日間ですぐに入居できるアパートを探し、たった3つのオプションの中から選んで契約。初期費用をドンと払ってすぐに引っ越し。  リサイクルショップで慌てて家電一式を買うも、この時期は引っ越しのピーク。宅配業者が忙しくて一週間も届かず。洗濯機は2週間経ったいまでも届かない。部屋にほとんど何もなく、生活環境が整わないまま仕事が始まって、目が回りそうになる。職場は日本の新聞社の英語セクション。ニュースを海外に発信するためにひたすら英語を書く。日系アメリカ人たちも含めて外国人が多い職場なのが唯一の救い。居場所をつくってもらっている。  物事は概して予期しない時に急に起きて、その勢いでどんどん展開していくものなのかもしれない。振り返れば、羅府新報で働きはじめてすぐに動き出した敬老の売却問題もそうだった。ついていくのが大変なくらい大きく展開していった。今でも状況は解決には至らずに、反対運動が行われていることは当時の取材相手らが教えてくれる。心はいまでも、日系社会とともにあるのだと感じる。  こうした私の心を知ってか、敬老に関する一連の問題を番組にしたいということで古巣のNHKから取材を受けている。本当は自分で取材に行きたいのだが、現実的に難しい今、取材協力という形で貢献できるだけでも光栄なことだと思う。  これも急に降って湧いた話。この勢いでいい方向に展開して、放送に結びついてほしいと願っている。私の春は、今年ものんびりと花見をする時間と余裕はなさそうだ。【中西奈緒】

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