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VW排ガス不正問題:日本の計測器、解明に貢献【上】


堀場製作所 米国本社社長に聞く

 自動車業界だけでなく、ドイツ経済にも打撃を与え、世界を揺るがす不祥事へと発展した独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の排ガス規制不正問題。不正を発見したウエストバージニア大学が使用していた排ガス計測器は、日本の計測機器メーカー「堀場製作所」の機材だった。普段日の目を見ることのなかった計測器が、世界的大企業の不正発覚に貢献。アーバインにある米国本社「ホリバ・インスツルメンツ」の堀場弾社長に、今回の事件で使用された計測器や事件後について話を聞いた。【取材=吉田純子】

VWの排ガス検査で使用された「堀場製作所」の車載型排ガス測定装置「OBS(On Board System)―2200」(堀場製作所提供)

ウエストバージニア大学が実施したVWの排ガス検査で使用された「堀場製作所」の車載型排ガス測定装置「OBS(On Board System)―2200」(堀場製作所提供)

 今回、ウエストバージニア大学の排ガス検査に使われた機材は、車載型排ガス測定装置「OBS(On Board System)―2200」。実際に道路を走行し、自動車排ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)や一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、二酸化窒素(NO2)が測定できる。  測定方法は、装置を車に載せ、実際に道路を走りながら排ガス量を測定する。試験室の中と実路とでは環境が違うため数値も変わる。同装置はより正確な数値が計れるだけでなく、小型化にも成功。乗用車の規制対象となる排ガス4成分(NOx、CO、CO2、NO2)の測定装置で世界最小(2014年5月同社調べ)となっている。どんな車種にも乗せることができるのが利点だと堀場社長は話す。  同製品を開発したのは自動車事業の責任者である中村博司氏。2002年に販売を開始して以来、その後も継続して開発を進めてきた。価格は日本円で2千万円ほどだ。  ウエストバージニア大学は4年ほど前から同社の製品を使用。今回のケースは、カリフォルニア州の排ガスや大気汚染の調査を行う加州大気資源局(CARB)から同大学の研究室に依頼が入り、調査を開始したという。  研究チームはVWの車にOBS―2200を載せて排ガス量を測定。するとNOxの値が高いことが判明した。研究チームは環境保護局(EPA)に調査結果を報告。EPAによると、VWは排ガス検査の時だけ、排ガス低減機能を作動させるソフトウエアを搭載し規制を逃れ、通常走行時では最大で基準値のおよそ40倍のNOxを排出していたことが発覚した。  「弊社は排ガスを測定する計測器を提供しているだけで、われわれが問題をみつけたわけではありません。ウエストバージニア大学の研究プロセスの中に、弊社の製品を使っていただいていたということです」と堀場社長は話す。事件発覚後に自社の計測器が今回のVWの計測に使用されていたということを知り、不正発覚には驚きを隠せなかったという。「まさかVWが排ガス不正をしていたとは、弊社の社員全員が思ってもみなかったことです」  VWはその後、ディーゼル車だけでなくガソリン車でも燃費をよく見せるためCO2の排出量も低く抑えていたと公表した。新たに別の不正が発覚したことで、世界的大企業の不祥事は瞬く間に全世界に衝撃を与えた。(後編に続く)

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