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日本の伝統、米国で紹介:アーティスト・犬飼真理さん

こけし人形の顔や着物を描くのに夢中のワークショップ参加者


 全米日系人博物館(JANM)で3日、日本の伝統「ひな祭り」を祝し、こけしのワークショップが行われた。講師を務めたのはロサンゼルスで活動する日本人アーティスト・犬飼真理さん。参加者は木製のこけしに自らペイントし、オリジナルのひな人形を作製した。アートを学ぶため、娘とともに米国にわたり、苦労を共にしながら芸術活動に励んできた犬飼さんに作品や母国・日本への思いなど話を聞いた。【吉田純子、写真も】

JANMのこけしのワークショップで参加者に指導する犬飼さん

 犬飼さんは1995年8月にアートを学ぶため渡米。サンタモニカ・コミュニティー・カレッジを卒業後、カリフォルニア芸術大学でキャラクター・アニメーションを学び2004年に卒業した。以降、ロサンゼルスを拠点に活動し、現在は服飾関係の会社に勤務し洋服のグラフィックデザインをするかたわら、油絵やアニメーションなど創作活動に励んでいる。  今回はひな祭りを前にJANMからワークショップの企画が舞い込んできたという。初めてのひな祭り関連イベントに、当初は何をしようか迷った。しかし「ひなまつりと日本の伝統工芸のこけしを組み合わせて、日本の2つの文化を知ってもらいたい」との思いから、こけしのワークショップを行った。「自ら描いたこけしのお姫さまとお殿さまを参加者に持って帰って喜んでもらいたかった」と話す。  ワークショップでは木製の2体のこけし人形の模型を用意。参加者はアクリル絵具を使って、お姫さまとお殿さまの着物、顔の表情を思い思いに描いていく。犬飼さんが作ったお手本を参考にする人、スマートフォンで日本のこけしを検索し、着物の柄を描いていく人の姿もあり、参加者は熱中しながら2体のこけしに生命を吹き込んだ。

「日本の美しさ引き継ぎたい」

小東京の1街とサンペドロ通り交差点にあるビル内ロビーに描かれている犬飼さんの壁画

 犬飼さんの作品は、随時LA各地のギャラリーで展示されているほか、小東京でも見ることができる。1街とサンペドロ通り交差点にあるビル(312 First st.)ロビーに描かれている壁画が犬飼さんの作品だ。  友人でアーティストのアンドリュー・へムさんとの共同作品でテーマは「春」。葛飾北斎などの日本画が好きで、作風にも日本からインスピレーションを受けたものが多い。  「日本にいたら日本を意識することはなかったかもしれない。ロサンゼルスにいるからこそ、日本の美しさを感じる。やっぱり日本人だから、日本の美しさを引き継いでいきたい」と力を込める。

「好きなことをして大変な方がいい」

着物姿の少女が美しい2014年の犬飼さんの作品「KINGYO HIME」

 「女の子のパワーを描きたい」そう語る犬飼さんの絵のモデルになっているのはおもに娘のセナさん、そして友人だ。モデルや知らない人を描いたことは一度もないと話す。「絵を描くことは私にとってコミュニケーションのひとつ。だから(心の通じ合った)大切な人しか描けないのです」  犬飼さんのこれまでの道のりは紆余曲折だったという。昔からアメリカでアートを学びたいと思っていた。しかしシングルマザーの犬飼さんにとって、渡米したら苦労の連続になるだろうと不安がつきまとった。そんな時、一足先に米国に来ていた妹の言葉が彼女の背中を押した。「どこにいても大変なら、自分のやりたいことをして大変な方がいい―」。この一言で渡米は決まった。  娘のぜんそくや肺炎、言葉の違う環境での子育てなど、母と子は苦難の時代を共に乗り越えてきた。学生時代は友人の助けも借りながら、子育てと学業を両立。そんな娘も今ではぜんそくを克服し今年大学院を卒業。犬飼さん自身は2015年にロサンゼルス市文化局から感謝状も授与されるなど、苦労の先に春を見いだした。  これからは学生時代に学んできたアニメーションにも力を入れていきたいと意気込む。

こけし人形の顔や着物をLAを拠点に活動するアーティストの犬飼真理さん。手には自身が描いたこけし人形


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