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そうめん流しや盆踊り、日本文化満喫:90周年に向け、気運高まる

七夕飾りの前で記念撮影する100人以上の学園関係者

 来年90周年を迎えるボイルハイツの羅府中央学園がこのほど、恒例の夏祭りを開催した。学園関係者約130人が、弓削ロバート会長をはじめとするPTAメンバーと保護者、教師らの準備したバーベキュー、かき氷、たこ焼きなどを楽しみ、そうめん流しや盆踊りなどの日本文化を体験。節目の年を間近に控え、学園全体に新たな気運が高まっている。【麻生美重】

 日本語学園協同システム(村方清学園長)は、バレー学園、パサデナ学園、第一学園アーバインと高中学部、そして来年90周年を迎える羅府中央学園の計5校を運営する。最も古い学園は、かつてロサンゼルスの中心部にあった創立107年の「羅府第一学園」。現在は第一学園アーバイン校としてその名を引き継いでいる。1948年の協同システム設立に伴い、LA近郊にあった各学園が加盟。93年までは7校が存在した。  羅府中央学園は小東京に最も近く、この地域の日本語学校を代表する一つだった。

流れるそうめんをすくって楽しむ生徒と学園主任の葵正子さん(左側手前から2人目)

 現在も協同システム5校中、羅府中央学園の生徒数は最大で、近年は日本語を母国語としない家庭の子女増加に対応するため、学級運営を変革し、独自の取り組みを重ねている。「保護者が家庭で日本語の宿題を手伝えるかどうか」という大まかな基準を作り、「JHL(日本語を母国語とする)」と「JFL(日本語を外国語とする)」という2種類のクラスを設置した。日本語を使用しない家庭の子どもは、宿題を自分で終わらせることが難しい。このような例も含め、日本語環境の家庭の子どもとは異なるカリキュラムで学習する方が効率良く学べるという考えに至った。

小学部の子どもたちと記念撮影をする(後列左から)エンジェル・ルイスさん、八木新之助さん、正木志果さん、ザッカリー・バーナルさん

 4、5年生を受け持つ田中レイラさんは、前述のクラス分けに加え、さらに自分の個性を生かした学級運営に取り組んでいる。自身も長年海外で暮らした帰国子女という田中さんは、生徒が言語学習でつまずいてしまう理由を経験から想像できるという。  言葉の学習だけでなく、文化を教えることにも注視している。自宅で焼きそばを準備し、授業ではパンに挟むだけにする。「時間がなくても日本独特のあの『焼きそばパン』を教えられるように」と工夫した。「まったく日本語を話せない生徒にもわかってもらえる教材作り、楽しく続けられる授業を心がけたい」と語る。  広場の中央には15フィートの七夕飾りが2竿吊るされていた。学園主任の蔡正子さんによると「仙台の(和菓子製造販売会社)『白松がモナカ本舗』さんからロサンゼルス七夕まつり委員へ寄贈があり、それを羅府中央学園へいただいた」特別の経緯を経ている。子どもたちは風にたなびく色とりどりの和紙に触れ、その手触りを楽しんでいた。  この日は、モンテベロ市との姉妹都市交流で兵庫県芦屋市からロサンゼルスを訪れていた大学生の正木志果さんと八木新之助さんの姿もあった。ホストを務めるエンジェル・ルイスさん、ザッカリー・バーナルさんに付き添われ、3週間の滞在中に二世週祭でのパレード参加やディズニーランド観光などを体験した。正木さんは「英語を勉強しようという気持ちがさらに強まった」、八木さんは「人との交流が楽しい。将来は英語を使った職業に就くよう頑張りたい」と語り、「残りの日程を無事故で満喫できるよう心がける」と口々に述べた。

「1+1」の音頭や「炭坑節」を踊る生徒や来場者

  場内の一角には木と竹で作ったそうめん流し台が設置され、ロサンゼルスの学校にしては珍しい光景が広がった。使い慣れない箸でぎこちなくそうめんすくいをする小さい子どもの姿もあり、辺りは元気な笑い声に包まれた。  高学年の生徒はかき氷やたこ焼き作りに精を出した。毎年、学園長がたこ焼きを作るのが恒例で、この日も7月に新しく就任した村方学園長が串を片手にたこ焼き作りにチャレンジした。9日に就任式を迎える村方学園長は小林政子理事長と席を並べて学園の歴史を語るなどし、「協同システムの誇るスピーチ大会や年間の行事を通して、日本文化を継承していくことに努めたい」と今後の抱負を語った。  「中央学園が今あるのは、PTAや保護者の絶え間ない協力のおかげ」と田中さんは感謝を表した。弓削会長はPTA役員としての仕事を「簡単なことではないけれど、誰かがやらなくては」という思いで続けている。  生徒が楽しく学ぶ環境を作るのは周囲の大人の役割でもある。PTAや教師らが縁の下の力持ちとなって、日本文化を引き継ぐ世代を育む。文化はその国の言語習得があってこそ正しく継承される。羅府中央学園はその大役を担っている。

長い列に並んでかき氷を求める子供たち


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