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【シリーズ1】南加庭園業連盟:日系団体として唯一「敬老」売却に反対

南加庭園業連盟の新しい会長に就任した戦後移住者(新一世)の藤谷征一さん(右)と日系3世の前会長デレック古川さん(左)

南加庭園業連盟の新しい会長に就任した戦後移住者(新一世)の藤谷征一さん(右)と日系3世の前会長デレック古川さん(左)


(1)プロローグ 〜新年会で語られたこと〜

 日系社会の多くの人が肩を落した「敬老売却」から3日後の2月7日、南加庭園業連盟の61回目となる新年会が行われた。およそ150人が集まり日本舞踊やラッフルズなどで賑々しく新年を祝う中、新会長の就任式と、連盟が敬老売却の反対運動に参加した半年間の活動報告がなされた。

 新しい会長に就任したのは戦後移住者(新一世)の藤谷征一さん(75)。日系3世の前会長デレック古川さん(55)からバトンを受け継いだ藤谷さんはあいさつで、連盟の厳しい現状を伝えた。「いちばんの問題は会員の高齢化です。現在、会員の平均年齢が77歳で、75歳以上の人が473名います。つまり会員の半数以上をしめているのです。組合維持の問題、また連盟会員の減少による運営の問題などいろいろな課題がありますが、時代の流れに遅れないよう先を見つめて一生懸命努力して、工夫して、取り組んでいきたい」と述べ、連盟が存在する目的は、各地の組合やその会員たちの役に立つことだと語った。

 一方で「敬老売却」について「結局こういう形になりましたが、敬老は私たち高齢者にとって必要な施設だからここで終わりということはありません。連盟に所属する私たちのような者も含めて、これから日系社会における高齢者のケアをどうしていくかが大切なのだと思います」と言う。

 高齢化している会員を守ることが大切な使命である連盟にとって、敬老売却は他人事ではなく「切実な危機」として受け止められた。その結果、数多くある日系団体が沈黙する中、「唯一」反対運動に参加。精力的な活動を繰り広げた「敬老を守る会」の屋台骨の一部となり、その活動には現在も続いて参加している。だが、その過程で、連盟内の日系3世と戦後移住者の考えの違いが浮き彫りとなった事実もある。

 どこの日系団体も高齢化は大きな問題だが、なぜ南加庭園業連盟だけが団結して活動に参加することになったのか。その背景にはどのような状況があったのか。シリーズで伝えていく。【中西奈緒、写真も】

◎これまでの経過

 非営利団体「敬老シニアヘルスケア」がおよそ50年にわたって運営してきた4つ高齢者施設(敬老引退者ホーム、敬老中間看護ホーム、敬老看護ホーム、敬老サウスベイ看護ホーム)は、2016年2月4日をもってエスクロー(商取引の際に第3者である金融機関を介して譲渡金額を決済する)が完了し、正式に売却が成立した。

 2015年9月に州司法当局からの承認が下りたのち、この状況についてきちんと知らされていなかった日系コミュニティーから戦後まれに見る大きな反対運動が起きた。反対運動は「敬老を守る会」が中心となって半年間にわたって展開。多くの政治家や無償(プロ・ボノ)弁護士たちの援助・協力を得て「売却の延期と公聴会の開催」を求めた法廷闘争の展開を図ったが、望んだ結果を得られずに終わった。

 売却先は不動産・開発を行う営利企業のパシフィカ社で、買い取った敬老4施設の運営に関しては引退者ホームをノーススター社に、中間看護ホームと2つの看護ホームをアスペン社にそれぞれの運営を委託した。施設の名称はそれぞれ「Sakura Gardens」「Sakura Intermidiate Care Facility 」「Kei-Ai Los Angeles Healthcare Center」「Kei-Ai South Bay Healthcare Center」に変更。非営利団体「敬老シニアヘルスケア」はそのまま事業の形態を変えて存続し、今回の売却金をもとにして高齢者の健康プログラムなどを中心に行う予定で、現在 420 East Third Street, Suite 1000 Los Angeles, CA 90013 に本拠地を置く(http://www.keiro.org/)

 「敬老を守る会」は現在、正式に非営利団体「高齢者を守る会 (Koreisha Senior Care and Advocacy)」となって、「敬老シニアヘルスケア」が売却金をどのように使っていくか、また、4つの施設が州司法当局が売却の条件として勧告した通りに、きちんと運営されているかを監視する体制づくりなどに取り組んでいる。

 このシリーズ企画では便宜上、「敬老」「敬老を守る会」といった当時の呼び名を引き続き使用する。

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