JANM「私たちが持ってきた物」:イラクとシリアの難民 、故郷の思い出詰まった写真展
母が戦時中、マンザナ強制収容所に収容されていたというロン・タンジさん(左)。難民の所持品の写真を見て、収容所に収容された時の母の話がよみがえってきたという
全米日系人博物館(JANM)で現在、イラクとシリアからの難民たちが持ってきた「故郷を思い出す大切な物」を紹介する写真展「私たちが持ってきた物―イラクとシリアからの断片と記憶」(What We Carried: Fragments and Memories from Iraq and Syria)が開催されている。初日となった19日、JANM会員限定のプレビューが行われ、訪れた人は、故郷を離れた人々の思いが詰まった写真に見入っていた。【吉田純子、写真も】
戦争や内戦が続くイラクとシリアからは、数百万人にもおよぶ人々が故郷を離れ、難民となっている。うち14万人以上が米国へと移住してきた。全米アラブ系アメリカ人博物館の資料によると、2012年に移民や難民として米国にやってきた人々は2万人以上。2016年にシリアから米国に渡った難民は1万2千人以上いるという。また国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の2017年の発表によると、世界の2100万人にも上る難民のうち51%が子どもだった。
「難民を受け入れ助けることこそ、人としてすべきこと」と話したヴィッキー・タムーシュさん。自身の祖父母もシリアからの移民だったという
展示では、難民が故郷を離れ、新たな地へと持ってきた大切な所持品の数々を、写真家のジム・ロマソン氏が撮った写真で紹介している。家族で使っていた食器や思い出の写真、家系図、手紙やアクセサリー、携帯電話など―。各写真にはなぜそれを選んだのか、持ち主自らが書いた理由も添えられている。
写真展に来ていたロン・タンジさんと、レバノン出身でおよそ12年前に米国に来たというクララ・バイさんは、「世界で何が起こっているのか、多くの人に知ってもらうよい機会になると思う」と口を揃える。
タンジさんの母は戦時中、マンザナ強制収容所に収容されていた。「難民の人々が故郷を離れる際に持ってきた物の写真を見ていると、母が話してくれた戦時中の体験談を思い出す。強制収容所に収容された時、母は9歳で、一家は限られた時間の中で洋服など最低限の物しか持っていくことが許されなかった。今の難民の人々も同じようにとても辛い時期を過ごしていたのだということが伝わってきた」と話す。
「住んでいた場所を去らざるをえなくなった人々のことを思うと悲しくなる」と話すバイさんは、今年4月、初めてマンザナ強制収容所跡地で行われている追悼記念式典に参加したという。「当時収容所に入れられていた日系人の経験と重なり合い、当時の日系人、そして現代のイラク、シリアからの難民の人々の苦悩が同時に伝わってくるようだった」と話した。
同じく来場者のひとりで祖父母がシリアからの移民だというヴィッキー・タムーシュさんは、「辛い歴史がある日系コミュニティーとアラブ系コミュニティーがこうして互いに協力し合い、より良い未来のために写真展を開催するのは2つのコミュニティーにとって、とても意義のあることだと思う」と語る。
難民や移民の人々の思い出の物の写真を目にし、「私たちは可能な限り難民を受け入れるべきだと思う。現在米国には難民を助けるための機関がたくさんあるが、政府の政策のせいで受け入れることが出来ない状態が続いている。人々は難民を受け入れ、助ける準備が出来ているというのに―」と肩を落とす。「どんな人でも幸せな人生を送る権利がある。私たちは難民を受け入れ、助けるべき。それが人間としてすべきことだと思う」と力を込めた。
写真展は全米アラブ系アメリカ人博物館からの巡回展。JANMで8月5日(日)まで開催されている。
ぬいぐるみやビデオテープなど、難民が故郷を離れる際に持ってきた物の写真に見入る来場者
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