祝いたい個人の栄誉
野球シーズンオフのこの時期は、日米で毎日、各賞の受賞が発表され、選手らの活躍を振り返るのがおもしろい。そんな中、大リーグの最優秀監督の発表が待ち遠しかった。地元ドジャースのロバーツが候補に挙がったからだ。対抗は、カブスを108年ぶりのワールドシリーズ制覇に導いた名将だっただけにドキドキしたが選出され、祝福したい。 就任1年目の栄冠は、史上6人目らしい。44歳の若大将は、けが人が続出した苦しい台所事情の中で、先手、先手の鮮やかな選手起用、そして敵の意表を突く思い切った采配が光り、チームをリーグ優勝決定戦に導いた。小柄で、ベンチで他の大きな選手に囲まれると、ひと際小さく見えるが、フィールドに姿を表すと大きく見え、威風が漂うから不思議だ。 監督は母親が沖縄出身で、自身も沖縄で生まれ8歳まで育った。試合前の沖縄のプロモーションイベントで「ロバーツ監督は、沖縄で生まれた」と、場内アナウンスが響くと、スタンドはどっと沸き、始球式では沖縄知事が投じた一球を受けてくれた。「日本は、私の人生の一部分」と公言し、故国を愛する。早く、親善大使に任命してもらいたい。 同じドジャースの前田は、新人王を逃した。だが、前田を攻守で援護した同僚の遊撃手シーガーが、選ばれたので喜んでほしい。新人王候補の最右翼だった弱冠22歳は、文句のつけようがない満票で選ばれ、受賞に花を添えた。おめでとう。 ドジャース関連ではまた、今季で67年間の実況生活に別れを告げ、「ドジャースの声」として敬愛されたビン・スカリーさんが、米国市民最高位の勲章の「大統領自由勲章」に選ばれた。テレビで見たのだが、受勲の吉報を電話で知り「私は、ただの野球アナウンサーなのに…」と恐縮し、相変わらずの人柄を感じさせた。来週のホワイトハウスでの授与式に胸を張って臨んでほしい。 ドジャースは今季、惜しくもワールドシリーズ進出を逃したが、こうした個人の栄誉は、他の選手やファンの励みとなる。来季こそ、29年ぶりの優勝への期待は高まる。【永田 潤】
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