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火中の栗を拾う

 リオ五輪の最後のフラッグ・ハンドオーバー(東京五輪引継ぎ式)のパフォーマンスの映像に皆さんもあ然とされたと思います。  その「奇跡の8分間」の仕掛人の一人、クリエイティブ・ディレクターは「火中の栗を拾うつもりで引き受けた」と言っていました。去年12月、東京五輪エンブレムや新国立競技場のデザインの白紙撤回と、五輪大揺れの時期でしたから。  「火中の栗を拾うつもりで」引き受けた人がもう一人います。民進党幹事長に就任した前総理大臣です。党両院議員総会の席で大見えを切りました。  「火中の栗を拾う」とは、本来、〈唆(そそのか)されて他人のために危険を冒して、馬鹿な目に遭うこと〉のたとえ(広辞林)。  17世紀のフランスの詩人、ラ・フォンテーヌの寓話――サルに煽(おだ)てられた猫が囲炉裏の中で焼けている栗を拾ったが、その栗を食べたのはサル。猫は大やけどをしてしまう――からきた諺(ことわざ)です。  「広辞林」に忠実に従えば、お二人の言う「火中の栗を拾う」という表現が的確かどうか。ディレクターのほうはまあ、いいとして、幹事長のほうは「馬鹿な目に遭った」のでしょうか。  まさか、他人(蓮舫・民進党党首)のためだけに危険を冒して、「蓮の花を支える蓮根になった」(ご本人の言葉)だけではないでしょう。政治家にとって役職は命。  百歩譲って、これから〈馬鹿な目に遭う〉かどうか、それはご本人の力量次第です。  ついでにもう一つ。「自分の政治人生のオトシマエをつけるつもりで(幹事長を)引き受けた」とも言っています。かつて総理の時、解散に打って出て、惨敗し、与党の座から転げ落ちた「借り」を返す、という決意なのでしょう。が、「オトシマエ」はいただけません。これは極道用語。一国の宰相だった人が公式の場で使う日本語ではありません。  異郷に住む「日本語族」には、同胞の使う日本語が時々気になります。 【高濱 賛】

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