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Writer's pictureRafu Shimpo

引越し騒動

 数年前に帰国してから、取りあえずの住居として川崎市宮前区のアパートに落ち着きました。東急田園都市線で渋谷まで25分、駅から徒歩3分と便利で8階建の最上階南西の角部屋。  周囲はまだ所々に武蔵野の田園の面影を残し、眼下には桜の小公園と地主の旧家が数軒、緑も濃くブドウ畑やキウイ畑が見下ろせます。目を西に向けると遥かに富士の霊峰が見え、朝夕に変化するその姿を楽しませてくれました。春には見下ろす方々の公園の桜が満開で、めっきり増えたマンションビルの夜景もなかなかの風情です。  夫婦だけなら借家でよいと思い、非常に気に入っていた部屋だが、友人たちの話では年を重ねるとともにオーナーがやがて借家の更新を渋ることがあるのだといいます。やむを得ずマンション(米国のコンドミニアム)を購入しようと、1年半前から物色を始めました。  希望条件は中古でよいが徒歩5分以内の駅近、広くなくてよいから高層階で展望の利く角部屋、慣れ親しんだ現在の駅から1~2駅以内です。不動産屋は希望に沿って根気よくさまざまな物件を紹介してくれました。首都圏では地価も回復し、マンション建設が活性化して価格も上昇気味です。いずれも二人にぴったりの物件は難しく、ようやくこの辺でと妥協し、1駅渋谷寄りで徒歩5分の部屋に決めました。  引越し当日は残念ながら雨、十数人のお手伝いは休日しか休めず実行です。「引越しは断捨離の絶好の機会だよ」と助言されていたにもかかわらず、どれにも捨て難い思い出がある品物は「これが二人暮らし?」とびっくりされるほどの量でした。それでも若い人たちは嫌な顔一つせずに運んでくれて運搬は1日で完了。残された二人は山積みされた段ボール箱にため息です。翌日から気を取り直し老骨に鞭打って荷物の整理、2~3日かけて整理が進み、先が見え始めました。  体の節々が痛み、休み休みだが新しい環境はそれなりに気分一新、多少広くなった住居への愛着が芽生え始めました。結局せっかく運んでもらったかなりの物を処分する羽目に。お手伝いの皆さんには感謝! 断捨離もあと2~3度経験すると上達すると思うが、もうコリゴリの引越しでした。【若尾龍彦】

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