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Writer's pictureRafu Shimpo

イチローのホームラン

 3年ぶりに、イチローがシアトルにやって来た。  リーグ交流戦で、地元マリナーズ(アメリカンリーグ)とイチローのマイアミ・マーリンズ(ナショナルリーグ)の対戦が実現したからだ。  マリナーズに在籍すること11年半。鮮烈なメジャーリーグデビューも、年間262本ヒット記録も、「マリナーズのイチロー」としてだったから、対戦相手とはいえイチローの『帰郷』にシアトルは沸いた。  4月17、18、19日の3連戦。初日はイチローのメジャー3000本安打等を祝うセレモニーがあり、最終日は何と、マリナーズのイチローとマーリンズのイチローとが一つの台に載った首振り人形(ボブルヘッド)が、先着2万名に配られた。 ボブルヘッドの日にはイチローが出場するに違いないと、夫と私も最終日の入場券を購入して球場に向かった。  球場で隣の席にひとり座ったのは、帽子、ジャケット、リュックサックと、マリナーズグッズで身を固めた80歳位の女性。大の野球フアンらしく、ラジオで解説を聞きながらの観戦だ。彼女もまた、「今日のチケットを買ったのは、もちろんイチローをもう一度見たかったからよ」。  そして予想通り、イチローは先発で出場。守備位置も長年見慣れていた右翼で、一瞬マリナーズ時代と錯覚しそうになるほどだ。イチローがバッターボックスに立つとワーッと球場全体が沸いて、「イ・チ・ロー」の声が飛ぶ。マリナーズの頃を知る者がみなイチローを応援しているように思えた。  9回表、10対4とマリナーズがほぼ勝ちを決めたところで、この試合最後のイチローの打席。バッターボックスに入るイチローに大きな声援が起こり、そして結果は…ホームラン。球場全体が揺れて、スタンディングオベーションとなった。興奮した私の胸はどきどきし、なぜか涙まで。試合が終わってもイチロー・コールがセーフコフィールドに響いた。  息長く現役であり続けるイチローを、いつまでも応援したい。いつかまた、このセーフコフィールドで「イチロー」と大声を出せる日のあることを願わずにはいられない。【楠瀬明子】

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