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Writer's pictureRafu Shimpo

ちょっと違うエルビス

 エルビス・プレスリー没後40年にちなんだイベントや商品が売り出されている。その中の一つ『A Boy from Tupelo』というタイトルで、またもやサンセッションの曲がリマスターされ発売された。ひとつにまとめられたアルバムが、70年代に初めてリリースされてから4度目のリマスター。エルビスの弾くリズムギターが鮮明になり、ミュージシャンとしてのエルビスも聞ける。  アメリカで暮らすようになり、その良さを解するようになったのがエルビスとボブ・ディラン。日本にいた当時、過去の遺物だと思っていたエルビスを聞いてみたのが70年代初頭で、いわゆるラスベガス時代。きらびやかなジャンプスーツに身を包み、オーケストラと呼べるほどの大人数バンドをバックに歌っていて、それだけで当時は食欲減退だった。『監獄ロック』『ラブミー・テンダー』『ブルースエード・シューズ』『好きにならずにいられない』等の代表曲を聞いても大きな感動は得られなかった。  80年代の中頃、グランドキャニオンへ向かう車の中でエルビスがサン・スタジオで録音した16曲に再度出会う。発売当時に分からなかったその素朴な音の虜になった。するめいかのように聴くほどに味わいがにじみ出てきた。ボーカリスト、ギタリストを問わず多くのロックレジェンドがエルビスの魅力を語っていたのが、この楽曲群だったと理解できた。一発録りのシンプルなアレンジだが、エルビスの歌とスコッティ・ムーアのギターが冴えわたリ、ビル・ブラックのベースがリズムを刻む。  RCAレコードとの契約後全米で大ヒットをとばし、スターダムへのし上がる前のエルビスが聞ける。白人が黒人ブルース歌手のように歌うR&Bやブルース、カントリーをカバー、当時にはなかった新しいスタイルの歌と演奏とレパートリーだった。オリジナル曲はないが、バラエティーに富んだ極上の選曲。『ハートブレイク・ホテル』で大ブレイクする1年以上前の1954年7月7日、初めてラジオから流れた曲が『ザッツ・オールライト』だった。サンセッションにはその後のロックミュージックの原型が凝縮されている。【清水一路】

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