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お疲れさま、LAの声

 「ドジャースの声」と称される伝説的アナウンサー、ビン・スカリーさんが、67年間の実況人生に、惜しまれながら、あと10日あまりで終止符を打つ。「お疲れさま」「ありがとう」と言いたい。  1927年、ブロンクス生まれのニューヨーカーが地元でデビューしたのは、大学を卒業した翌年。弱冠23歳の大抜擢で、当時のプロデューサーに先見の明があったことは、プロスポーツ界最長というロングキャリアが物語っている。LAには58年、フランチャイズの移転に伴い移り住み、市民から熱烈な歓迎を受けて以来、「LAの声」として愛され続けてきた。  御年88歳ながら、衰えを感じさせない滑舌で、若々しく、その美声をディズニーホールで轟かせれば、いっそう美しい旋律を奏でることだろう。独自のリサーチによる選手の紹介はもちろん、ネットで検索しても見つからない、故障後に復活を遂げた陰の努力やプライベートの逸話は「どうやって調べたのだ」と、いつも頭が下がった。名調子に引き込まれると試合を忘れ、甘美な夢心地に浸ることさえもあり、不思議な思いをした。  ワールドシリーズ、オールスター戦、コーファックスの完全試合、野茂のノーヒッターなど、球史に残る数々の名場面を伝えてきた。静かに語りかけるスタイルで、手に汗握る逆転サヨナラホームランの劇的勝利も、決して感情を高ぶらせ絶叫することはない。あくまでも伝える側に徹し、主役の選手を盛り立てる、メディアの鑑(かがみ)であると尊敬した。米国史をはじめ、野球関連以外の紹介の仕方も絶妙だった。  殿堂入りが確実視される敵チームの大選手たちが試合前に、次々にあいさつに訪れるというから驚く。前田投手など、孫ほどの年の差のあるドジャースの若い選手たち。引退の花道を飾る男に捧げる最高の演出は、28年ぶりのワールドシリーズ制覇しかないだろう。  みなさんには、テレビまたはラジオで、レジェンドの「最後の声」に耳を傾けてもらいたい。そして茶の間から大きな拍手を惜しみなく、スタンディングオベーションで送ってもらえればうれしい。【永田 潤】

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